2014年5月11日日曜日

ブラー vs. オアシス、ブリットポップ戦争


イギリスでは80年代終わりから90年代初頭に盛り上がりを見せていたストーンローゼスやハッピーマンデーズを中心としたマッドチェスターと呼ばれるロックとダンスミュージックを組み合わせた音楽が落ち着きかけてくると、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのようなシューゲイザーが局所的なブームに。しかし大きなムーヴメントとなることはなく終息。

それらと入れ替わるようにイギリスのロックシーンに台頭したのが、アメリカ発のグランジと呼ばれる音楽だった。1991年のニルヴァーナの世界的なブレイクにより、アメリカのバンドがイギリスの音楽シーンを席捲。すると次第に音楽だけではなく、ファッション(長髪、ネルシャツ、破れたジーンズ)やライフスタイルに至るまで、イギリスのユースカルチャー全体がアメリカ産の文化に侵食され始めていた。そんな風潮の中、イギリスの一部の人々の間ではアメリカに対する反発心が徐々に高まっていく。

1992年、ブラーはマネージャーがバンドの金を使い込んだことで抱えた6万ポンドの負債の返済のため、2ヵ月半休みなしで44公演という過酷な日程でのアメリカツアーを敢行する。しかし当時アメリカはグランジブーム。ブラーは全く相手にされなかった。ライブの度に空き缶を投げられたり散々な思いをする。イギリスに戻ったブラーはアルバムの制作を開始。アメリカでの冷遇やグランジブームへの反骨心がデーモンの「イギリス的なもの」へのこだわりを強くさせた。フレッド・ペリーのポロシャツ、細めのジーンズにドクターマーチンの靴で身を包み、ルックス面でもイギリス性を強調。そして1993年5月、ブリティッシュロックの伝統にならった3rdアルバム『Modern Life Is Rubbish』をリリースする。チャートでは15位とセールス面では伸び悩んだが、ファンの支持を拡大。やがて花開くブリットポップの黎明期を代表する名盤として、音楽史にその名を刻むことになる。

1994年4月8日、グランジの象徴的存在だったカート・コバーンが自殺。グランジブームは終息する。奇しくもその翌週にオアシスがシングル「Supersonic」でデビュー。同年4月にブラーが3rdアルバム『Parklife』を、8月にオアシスが1stアルバム『Definitely Maybe』をリリース。両者とも全英チャート1位を獲得する大ヒットに。ブラーとオアシスの活躍はブリットポップという名の新たな革命を巨大なものへと変貌させていくのであった。

ブリットポップは音楽だけに留まらない国民的な社会現象へと発展していく。メディアはこぞってブリットポップ系バンドを取り上げ、イギリス文化の再評価と絡めて賞賛。イギリスの誇りを高々と掲げた"大英帝国万歳"ムードが全土で一層盛り上がっていく。ブリットポップが最盛期にあった95年、訛りの強い荒々しい言葉でメロディアスなサウンドを奏でる北部(マンチェスター)労働者階級出身のオアシスと、南部(ロンドン)中産階級出身でウィットかつシニカルな歌詞のポップサウンドを奏でるブラーはメディアに煽られる形で対立していく。そして1995年8月14日シングルの同日リリースでその対立はピークを迎える。結果はブラーが初の全英チャート1位を獲得して勝利。しかし、ブラーは翌年1995年9月にリリースした4thアルバム『The Great Escape』で再び全英チャート1位を獲得するも、その1ヶ月にリリースされたオアシスの2ndアルバム『(What's the Story) Morning Glory?』にセールス面で大敗してしまう。このアルバムでの勝敗は両者の立場を逆転させる結果となる。

最盛期を迎えたブリットポップは、玉石混合の便乗バンドの乱立により、やがてシーンは飽和状態に。新鮮さを失ったブリットポップは1996年後半から衰退への道をたどる。ブラーは1997年2月にリリースした5thアルバム『Blur』で「イギリスらしさ」を捨ててアメリカのオルタナティヴ・ロックに接近。デーモンの「ブリットポップは死んだ」という発言もありブリットポップは終焉を迎える。オアシスも同年8月に3rdアルバム『Be Here Now』をリリースするが酷評されるなど本人たちも認める失敗作に。イギリスの音楽シーンは、プリディジーやケミカル・ブラザーズのようなビッグ・ビート(デジタル・ロック)と呼ばれるダンス・ミュージック、アイドル系ポップス、R&Bへと向かう。ブリットポップのブームと一線を画していたレディオヘッドやヴァーヴが躍進する中、オアシスはメインストリームにおける殆ど唯一のブリットポップ生き残り組として、その後もイギリスのロックシーンの中核を担っていくのであった。

Blur(ブラー)





Oasis(オアシス)




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